「日本人よ、何故アメリカズカップを見ない?」
1851年より現在まで続く国際ヨットレール。
近代オリンピックよりも45年(1896年)
サッカーのワールドカップよりも45年(1930年)
全英オープンゴルフよりも9年(1860年)
日本では黒船の時代と言えばわかりやすいでしょうか?
現在も継続されている国際大会において、最も古い、長い歴史を起こるのが「アメリカズカップ」です。
また現在でも使われているトロフィーの中で、最も古いものがこの「アメリカズカップ」。
その「アメリカズカップ」の予選会でもあるワールドシリーズが、 2016年11月18日・19日・20日に、福岡で開催されます。
海洋国でありながら、海洋イベントが開催されたことがない日本。
いよいよ!
満を持して、世界最高峰のヨットレースがやってきます。
以前より私はこのアメリカズカップが大好きで、日本開催が決まった際にはこんな記事も書いています。
アメリカズカップ
イギリス、ロンドンで開催された第一回万国博覧会の記念行事としてロイヤル・ヨット・スコードロン(Royal Yacht Squadron)が主催したワイト島一周レースがすべての歴史の始まりです。
このレースで優勝したのが「アメリカ号」。
ビクトリア女王から託された銀製の水差しを自国へ持ち帰り、「アメリカ号のカップ」ということから「アメリカズカップ」と呼ばれようになりました。
『アメリカ合衆国』のアメリカではありません。
「カップの保持者は、いかなる国の挑戦も受けなくてはならない」
これに基づき、第1回アメリカズカップが1970年に開催され、現在に至っているのです。
とはいえ、多くの富豪がアメリカに挑んだのですが、その後132年に亘ってアメリカ合衆国のヨットクラブが防衛してきました。
この中には、あの紅茶のサー・トーマス・リプトンも挑戦しているのです。
そして・・・ 1983年の第25回大会において、ニューヨークヨットクラブの「リバティー号」が、オーストラリアの「オーストラリアⅡ号」に敗れ、初めてアメリカズカップがアメリカ国外に渡ることになりました。
「リバティー号」のスキッパー(司令役)であった、デニス・コナーは カップを失った最初のアメリカ人」 の汚名をきせられアメリカ中から非難をあびることに。
奪還目指し挑んだ、1987年オーストラリア・フリーマントル大会では、自らがチームを率いて、カップ奪取に成功したのです。
一転アメリカンヒーローとなったコナーは、“ミスターアメリカズカップ”として、ロナルド・レーガン大統領によってホワイトハウスに招待されました。
後に、映画「ウインズ」の元ネタとなったのです。
それから、ニュージーランド、スイスと強国が表れ、ニュージーランドは防衛国の一つとして、アメリカズカップの常連となったのです。
そう。
実は、イギリス発祥でありながら、アメリカズカップがイギリスに渡ったことはまだないのです。
私はこの1983年生まれ。
同じくヨット強豪国であるニュージーランドを留学先に選んだこともあって、一時期ヨットの世界を目指した時期もありました。
もちろん、そう簡単なものではありません。
やはり小さいころからヨットに触れている程の経験が必要ということで、目指しただけで断念という結果に。
かっこいいです、ヨット乗り!
国の総合力を問われる国別対抗戦
近年では、ヨットの進化もあり、ホバークラフトやほぼ飛行機に例えられる事もあります。
ヨットにも関わらず、水に接する摩擦でさえも、抵抗と考えられるようになりました。
と、言うのも、レースで使用されるヨットは、出場国で建造しなくてはいけません。
海洋法などで定められている様に、船舶の国籍は製造国に既存するからですね。
造船工学はもちろん、
建築工学
材料工学
流体力学
航空力学
気象学
出場国の多面的な技術が投入され、総合力が試されます。
最先端技術、軍事からの応用技術も投入される例もあります。
アメリカスカップの基本ルール「贈与証書(Deed of Gift)」の規定上は、レースで使用されるヨットは
「1本マストの場合、水線長が44フィート以上90フィート以下」
「マストが2本以上の場合、水線長が80フィート以上115フィート以下」
と定められているだけ。
この範囲にあれば、防衛艇・挑戦艇の合意があればどのような規格のヨットを用いても良いことになっています。
実際には、時代ごとにヨットの規格は変更され、ある程度の統一ルールが定められる事が多いです。
1958年(第17回)大会から1987年(第26回)大会までは12メートル級。
1992年(第28回)大会から2007年(第32回)大会にはICAA。
2013年以降は、「AC45」「AC72」という双胴船が認められ、今回の大会でも主たる船体となっています。
双胴船というのは、カヌーの様な細い艇を2体つないだ船。
「AC72」
1.スピード感のある、エキサイティングなレースを保証する艇。
2.セーラーとデザイナーにとってチャレンジャブルな艇。
3.スポーツファンの心をつかむ艇
4.ほとんどのコンディションでのレースが可能で、レース日程の延期を最小限にする艇
5.微風から強風まで、接戦のレースを展開することができる艇
6.トータルの費用を抑えることに貢献する艇
7.組み立て・解体が48時間以内でできる艇
全長:22m
最大幅:14m
マスト高:40m
吃水:4.40m
重量:5900kg
ウィング面積:260m2
ジブ面積:80m2
ジェネが-面積:320m2
クルー:11名
最高スピード:43ノット(時速80km)
(参考http://bulkhead.jp/ http://www.jsaf.or.jp/ac/about/)
セールも近年では「帆」という概念から「翼」となり、繊維製ではなく硬質な素材となっています。
カーボンといった、軽い素材も今では当たり前。
大きさに似合わず、非常に軽い船体となっているのです。
そして、ヨットの進化で、現在のヨットにおける最も変わった部分が、先ほどにも書きました「フォイリング」、空を飛ぶのです。
もちろん動力はありません。
風力のみで「キィィィーン」という音と共に艇が浮き、一部のパーツを除き空を飛びます。
感覚としては 「飛行機の離陸時が続く」 と表現がされます。
主なレースルール
「アメリカズカップ」というのは、実は総称で、いくつかのレースを世界中で繰り広げられます。
前回大会の優勝艇(防衛艇)と挑戦艇のレース、1対1の最終戦が「アメリカズカップ」。
この挑戦艇を選ぶ予選会、これを「ルイヴィトンカップ(ワールドシリーズ)」と呼びます。
今回福岡で開催されるのはこのワールドシリーズの一戦というわけです。
ルイヴィトンカップでは、挑戦艇が一斉にレースを行い、シリーズ8~10戦で全約20レースで一位を決めます。
最終戦であるアメリカズカップは、防衛艇の所属国が会場となり、次回のアメリカズカップは 2017年6月にバミューダ諸島で開催が予定されています。
アメリカズカップでは、1対1のマッチレース。
一騎打ちですね。
スタートは一斉に「よーいドン!」ではなく、始まるタイミングにスタートが切られます。
艇がそのタイミングに合わせて、スタートラインを切ることでレースが始まります。
レースの海域内に設置されたブイ(マーク)を、既定の順序・回数で回ります。
最終マーク・ゴールラインを先に切った方が勝ち。
レースとはいえ、海洋法が適用されるので、進路妨害などの違反が適用されます。
監視・審判による判断で、海域外に出てしまったり、違反の度ペナルティーが科せられ、一番早い艇を決定します。
各レースの順位によって点数が決められ、全レース終了時の得点によって勝敗が決せられます。
残念ながら、日本チームはこれまでにアメリカズカップに出場した経験はありません。
しかし、チーム・ニュージーランドには、鹿取正信氏が性能分析担当として加わっていたこともあり、日本人としては本選出場経験はあるのです。
技術的には日本は高度なテクノロジーを要しています。
世界のヨット規格を見極め、最高の艇で挑めば、アメリカズカップへの挑戦権を得られるのもそう遠い話ではないかと。
長い大会の歴史において、優勝杯である「アメリカズカップ」を手にしたのは
アメリカ
スイス
オーストラリア
ニュージーランド
の4か国のみ。
発祥の地イギリスでは、アメリカに負けることなど予想にもしていなかったのでしょう。
ここで生まれた言葉 ”There is no second(2位は存在しない)” レースでアメリカが優勝した際に、2着についたものはどのチームかを尋ねた英国のビクトリア女王に対しての返答だったと言われています。
それは、常に優勝するかどうか?
それ以外は何の意味もないという有名なセリフです。
これがおそらく、現在においても一騎打ち、マッチレースが採用されている理由なのではないでしょうか?
また、ヨットには非常に高額なお金がかかります。
なのでオラクルやエミレーツといった、高級ブランドが並ぶのも見ものです。
近年では女性セーラーの誕生もあり、水上の戦いに命を懸けて者たちの姿を、ぜひ一度ご覧ください!
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